二点に分けて戯曲が立体化していく際に興味深いと思ったことを記述したい。
〈場所と小道具の関係〉
木星の五年後の場所設定はぼんやりしていた。この日はじめて特定の場所と、そこに何があるかを決めた。会社の倉庫のような場所で上には棚があって、山科さんは渡邊さんと話をしていて、コップを持つことにしよう、という場所の明確な設定が立ち上がった。
ちなみに、ここで言う場所とは、戯曲を書く際に言われるような「場所、背景、問題」の場所とは少し異なる性質のものだと感じる。
ここで言う場所とは、戯曲における「会社で3人がヘルメットを被って会話をしている」場所、を具体的な装置を用いて立ち上げていく際の場所なのだと。戯曲の場所を立ち上げでいく場所の作業なのだと。
ちなみに、犬飼作品では「舞台装置」と言われるようなものはない。だからこそ、戯曲における「場所」をより明確化し、俳優同士でその「場所」を共有することが大事になってくるのだろうと思う。
山科さんがコップを持つことにより、意識が分散され俳優を見やすくなることもかなったように感じた。戯曲における場所から演出の場所へ。場所のさらなる規定により、体の向きも自然と開けてきて、動きにアクセントが生じている。
〈まなざしによる主の移動〉
まなざし磁力の分散(まなざしの俊敏な移動)から、だれかを主にしない発話がより見えてくる。わたしはその変化を稽古場で観察していてすごく面白く感じている。戯曲もさることながら、まなざしにより発話の主がどんどん変わっていくような錯覚を受ける。また、戯曲で設定された「間」を受ける際には、その会話主が一瞬空白化(幽霊化)する現象が起こる。
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